ABEJAを退職して起業します!

2018年6月18日をもって、約3年半お世話になった株式会社ABEJAを正式に退職しました。

そして株式会社KICONIA WORKS(キコニア ワークス)という新しい会社を立ち上げました!

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ABEJAで何をやってきたのか

私がABEJAに入社したとき、そこには優秀なエンジニアとDeep Learningを中心とした最先端テクノロジーの知見だけが存在していました。当時はAI関連で売上を立てることがあまりできておらず、インタラクティブ広告などで売上を立てていました。私はなんとかAI関連のサービスを成立させ、広めていきたいと色々なところにとにかく話をしにいったのを覚えています。

そういや当時のABEJAには変な習慣があって、新入社員(中途も)はゴーゴーカレーの2kg以上の大盛りを食べるというやつがあった・・・笑

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ABEJA代表の岡田さんもよく言ってますが、今でこそDeep Learningと言えばなんとなく分かる人が増えていますが、当時は「何それ?」という感じだったので、非常に説明に時間がかかり、顧客との温度感のギャップを埋めるのに苦労しました。またIoTデバイスの取り扱い、ネットワークなどインフラの複雑さ、サーバー負荷、フロント開発との連携など、色々な課題があり毎日新しい課題の発見と解決、そして導入と支援を続けていた日々が今では懐かしいですし、当時は毎日新しいことが待っていて、新しいこと好きな自分にとっては楽しい毎日でした。

当時の集合写真。約半数以上が今は皆別の道に進んでいるが、いまだに仲良い!

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売店舗向けのSaaSサービスが立ち上げフェーズが終了し、成長フェーズになるにつれてメンバーも増え、ルーチンワークが増え、事業開発的な仕事から営業・マーケティングの仕事が多くなってきて少しモチベーションが落ちかかった時、経営陣からPlatform構想の詳細を聞き、Deep Learningを中心としたAIの事業開発を小売以外の産業にもしていくというチャレンジさせてもらうようになりました。

経営合宿の一場面。終わりのない議論で長時間にわたるものばかりだったが、有意義な時間だったなと思う。

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尊敬するデータサイエンティストとわがままだけど超仕事の早いエンジニアと3人のチームで大きいプロジェクトに取り組み、成功を収められたと思っています。少なくとも顧客の価値には貢献できたと思っています。ただ、最初は統計や機械学習の基礎知識がなく(正確には大学時代学んだのに頭からは消え失せていた)、またまた毎日新しい発見の連続で、日々InputとOutputの繰り返しでした。これがまたまた自分の好奇心をくすぐり本当に楽しい日々だったわけです。

この頃から社外でのプレゼンが増えて、講演してほしいという話が個人にも入るようになってきた。

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Platform構想がいよいよ完成に近づいてくると、今度はパートナーシップ制度の立ち上げ(数週間でやりきった・・・)やPlatformのビジネス体系の確立や法務面の整備などが待っていて、これまら新しいこと好きの自分は楽しかったわけですが、このあたりから会社の方向性と自分の方向性のズレを感じてきたのも事実です。

前のオフィス移転は社員みんなでやって楽しかったけど、大きな会社になるとそれもできなくなってきたのは残念でもあり、嬉しかった。

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それはさておき、今でこそ会社法上は大企業で大きくなってきたABEJAですが、入社当時には何もなく、色んなこともやらせてもらいました。新卒採用や中途採用はもちろんのこと労務管理、承認・稟議フローの構築、財務をちょっと手伝わせてもらったり、オフィス移転を手伝ったり。大企業にいたらこんなに沢山の経験は絶対にできないでしょう。機械学習のエンジニアリング以外は経営に必要なことはほぼやったんじゃないかと思う。もちろんその前の職場までもやってきたことはあるのだが、ここまで当事者意識をもってやったことはないと思う。(なんせ自分がやらなければ誰もやらないみたいなことが多かったので)

とにかくABEJAでは手をあげれば、色んなことができたので、色々チャレンジさせてもらったし、結果としてABEJAが成長していて、自分のやったこと・自分の成長と会社の成長がリンクしていて、非常にやりがいがありました。

ABEJAの自社イベント「SIX2018」。個人的には親しくさせていただいているお客様と話ができないくらい忙しくて、残念だったイベント。

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なんで今やめるのか?

ABEJAは今絶好調にみえるでしょう。SIXという大きなAIのイベントを実施し、AI EXPOでは出展企業の中で1,2を争う大きなブースを出し、メディアにも取り上げられ、大手企業との取り組み実績も多数出ている。そんな中、「何故やめるの?」とよく聞かれます。なんなら「セクハラでクビになった?」とか「経営陣と喧嘩したの?」とか聞かれるくらい周りの人からしたら驚きみたい。

そして世間は狭くて、書上が辞めるという話がAI業界に広まり、実は多数の方からオファーをいただき、本当に嬉しかったです。ABEJAの中で様々な困難にぶち当たりながらもそこで得た経験は非常に大きく、その経験を必要としてくれる会社が多かったのは本当にABEJAのおかげだなと感じます。

さて、自分がABEJAを辞める理由は3つあります。

1つは、テクノロジーの制限です。ABEJAは未来志向です。今後もどんどん未来を切り開いていってくれると信じています。しかしながら市場のニーズは実は未来的なものではなく旧来のものが多いのです。Deep LearningをBtoB領域で身近なものにしたのはABEJAだと思っています。これはすごいことですが、私が毎月数十社のお客様と話す中でお客様の課題を解決できるのはDeep Learningではないことも非常に多いわけです。しかし、ABEJAは未来志向であり、Deep Learningを中心とした最先端テクノロジーを好みます。結果、旧来の簡易的なAIなどで解決できるものは対象にならないことが多く、自分としては目の前に困っているお客様がいて助けられるのに助けられないという状況が続いていて、もどかしさを感じていました。

2つ目に、Platformの制限です。ABEJA PlatformというABEJAのPlatformの構想(コンセプト)は素晴らしいと思います。今後どんどんDeep Learningのニーズは出てくると思いますが、そのときに役立つPlatformになってくれることを願っています。しかしながらABEJA PlatformはABEJAの契約・管理するインフラの上で構築されたDeep Learningの運用には良いPlatformです。これは逆に言うと、お客様の自社のサーバーや他のインフラでは運用できないことを意味し、Deep LearningではないAIの場合そのメリットを最大限に活かせないということを意味します。個人的には自社のサーバーで面倒なことやるよりもABEJAに全部任せますの方がいいんじゃないかなと思うところもあります。しかしながら現実にはセキュリティ面の問題や商流感の問題で、ABEJA Platformを使うことが全てのお客様が求めるものではないというのが現状です。結果、1つ目の理由と同様に目の前に困っているお客様がいて助けられるのに助けられないという状況が続いていて、もどかしさを感じてしまうわけです。

3つ目は、経営戦略に関してです。これは自分がABEJAの経営者だったら今のABEJAの経営陣と同じことをすると思います。ABEJAはABEJA Platformという未来志向の素晴らしいサービスの構築や営業・マーケティングなどの人財等に多額の投資を必要とします。そのためには多くのキャッシュを稼ぐ必要があると思います(もちろん資金調達もしていますが)。キャッシュを稼ぐのはPlatformもありますが、顧客にプロジェクト型でAI関連の開発を行う受託型ビジネスもあります。少数精鋭でやっていますので、例えば5人の稼働を1000万円で提供するのか1億円で提供するのか、どちらを選ぶかといったら後者に決まってます。これは経営として当然の判断です。しかしながら日々お客様に接している自分としては「そんなにお金は出せないよ」「でも助けてよ」というお客様を目の前にしていて、これまた目の前に困っているお客様がいて助けられるのに助けられないという状況が続いていて、もどかしさを感じてしまうわけです。

自分はABEJAの中でお客様に対してソリューション開発をしてきたわけですが、ABEJAは今プラットフォーマーへと変化しようとしています。このPlatoformに携わることも非常に魅力的ではありました。しかしながら自分はそれよりも先に困っている人を助けたい、ダイレクトに顧客価値になるものを提供したいと思うようになり、退職という決断をしました。ABEJAはプラットフォーマーへ、自分はその上位層でソリューション開発ベンダーへ、うまく連携していくこともできるのではないかと考えています。

KICONIA WORKSについて

そんなこんなで、ABEJAの有休消化中に経営陣の配慮もあり、新会社の立ち上げ準備をさせていただいていました。転職という選択肢もあり、実際光栄なことにいくつかオファーもいただきましたが、起業という選択肢にチャレンジすることになりました。(結構、周りに促された感もありますが)

まずKICONIA WORKSの社名の由来です。“KICONIA”は本来”CICONIA”が正しいスペルです。ciconiaは学名で「コウノトリ」という意味で、我々はテクノロジーの恩恵・価値を様々な業界・企業に届けたいという想いがあり、それは「コウノトリが幸せを運んでくる」ようなイメージがまさに当てはまると考えています。またなぜ頭文字の”C”を”K”に変えているかという点にも我々の想いが込められています。この”K”は”Knowledge”(知見・知識)の”K”です。単にAIを中心としたシステムやビジネス構築をするだけでなく、お客様とプロジェクトをご一緒する中で今までに得てきたナレッジをお客様の提供し、ナレッジを移管していくことが重要であると考えています。特にAIはつくって終わりではなく、運用していくことが重要であり、ナレッジをお客様側でも持っていただくことで、構築後もお客様側でできる限り運用できる仕組みづくりもお手伝いしたいと強く願っています。そして、新たな課題や更に困難なプロジェクトへの挑戦をともにしていくことで、ともに成長できることが望ましいという想いを込めた社名です。(実際には社名決定経緯には面白話もありますがここでは伏せます)この社名確定には盟友と呼ばせていただきたい名古屋のイケてるベンチャーであるT社のNさんに協力をいただいたり、ロゴ作成では新卒で入社した会社の同期でデザイナーのUさんに協力をいただき、ホント感謝感謝です。

新しい会社のロゴ。鳥が空を飛んでるイメージです。

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社名の通り、テクノロジーの価値をお客様に届けたいわけですが、テクノロジーというのはそれ単体は価値にならないと思っています。テクノロジーをお客様のビジネスと融合させ初めて価値になると思います。

ではKICONIA WORKSは何をやる会社か。先ほどABEJAについて触れた際に記載した通り、ABEJAはプラットフォーマーになろうとしています。これは他社から少し抜きに出てるのではないかと思います。色んなAIのベンチャーはだいたい2つの選択肢をとっていることが多いです。1つはABEJAのようにプラットフォーマー(プラットフォームという便利な言葉は、人によって捉え方が変わりますが、ここでは敢えてそれには触れず・・・)になろうとする。2つ目にAIを使ったサービスをつくって売るという選択肢です。どちらも一度良いものをつくり定期的にアップデートしていけば、労働集約型とは違い、ストック型ビジネスで高収益かつ安定的なキャッシュ基盤をつくることができ、上場したりバイアウトすることもしやすくなります。どの会社もここを目指しているところが多いように思えます。これを否定するつもりは全くなく、いずれはそうなれたらいいなあと思いつつ、自分としては、目の前にいるお客様に価値を提供したいという想いが強く、まずはここで勝負してみようと思っています。プラットフォームもサービスもお客様にとってはそれを使って企業価値が高まれば良いのですが、実際には自分達にカスタマイズされたプラットフォームやサービス、アルゴリズムやモデルが欲しいというニーズは多いと感じています。そして実はそういった各業界のお客様の課題とAIのベンチャーがやろうとしていることが現状は離れてしまっていて、それを繋ぐ役割がしばらくは必要なのではないかと思うわけです。

なので、自分はKICONIA WORKSという会社を信頼ある仲間と立ち上げ、受託(コンサル)型で色々な業界に色々なテクノロジーを活用して課題を解決し、テクノロジーを顧客価値に変えていくことをしていきたいと考えています。よくあるベンチャーの特徴として、良いテクノロジーや思考を思いつき、それを使って何らかの課題を解決するサービスを作ろうということが多いと思います。ですが、これは実は本来あるべき姿ではないと個人的には思うのです。(Googleとかはむしろ潜在ニーズや課題を解決してしまっている部分もありますが・・・。)弊社がやりたいのはお客様の課題に向き合い(ヒアリング・コンサルティング・業界理解)、その課題を効率的に解決でき、費用対効果の良いテクノロジーやプラットフォームを使いソリューションを開発してあげることです。そしてそれを適正な価格で真摯にお客様に向き合うことです。

まとめると下記です。

・AIを中心とした受託型のコンサル、モデル・システム開発を行う

・ビジネス課題から最適なテクノロジーを選択する(それが最先端とは限らない)

・プラットフォームやインフラなども課題や顧客要望で最適なものを選択する

・安売りはしないけど適正な価格で価値提供する

上記が直近1年間の考えで、この1年間で様々な業界で様々なテクノロジーを活用したビジネス・システム開発支援をしていきたいと思います。すでに複数社の方々とプロジェクトを開始していますが、メディアプロモーション系から製造業、アミューズメント、物流、小売、飲食、様々な業界でのプロジェクトを進めています。ここで使うテクノロジーは勿論現在一番脚光を浴びているDeep Learningもあれば、従来からあるルールベースのものや自然言語処理や数理最適化など様々なものがあります。インフラもAWSやAzure、GCP、お客様のサーバー、勿論ABEJA Platformも様々なものをお客様のご要望や課題に合わせて使い分けていくつもりです。

2年目以降は出来ればこれからの1年間で様々な業界で様々なテクノロジー活用の経験をして、「この業界でこういったテクノロジーを活用すれば業界にインパクトを与えられる」といった領域に対してサービス開発をしていきたいと考えています。かつ、それを自社のサービスとして自社で売っていくというよりも業界に知見があり面を抑えているような企業とコラボレーションしてサービス開発をしたいと考えています。これにより一気に面を捉え、短期間にテクノロジーの恩恵を業界に提供できると考えているからです。

感謝の気持ち

今回退職と起業という選択にあたり、様々な方に感謝しています。

まずはABEJAの皆さん。自分がいっちょまえにお客様や観衆を前にAIについて語ったりコンサルティングしたりエンジニアとともにビジネス開発支援ができているのは間違いなくABEJAでの経験があったからです。特に経営陣の皆には本当にお世話になりました。またメンバーだけではなく、株主の皆さんにも本当にお世話になりました。ありがとうございました。

次に起業すべきだと背中を押してくれた仲間たち。起業なんて全く考えてなかったけど、Sさんに「君が起業するなら参加したい」と言われてその気になってしまい、他の人からも「お前が起業するならサポートする」と言ってもらい、結果自分にとって一番チャレンジングで楽しい選択肢をとることができました。ありがとう!

更に起業する上で不安だった自分を支えてくれた仲間たち。最初のプロジェクトを一緒にやってくれているWさんとNさん、登記とか面倒なのを全部引き受けてくれたT社長、T社長を紹介してくれて色々相談にのってくれたYさんやOさんやKさんなど会計士仲間のみんな、税金周り含め起業のサポートしてくれたAさんやHさん、無料で超いきなりなのに相談のってくれた弁護士のY(持つべきは高校の友人)、メシおごってくれながら色々相談のってくれた投資家のSさん、ABEJAのOBとして仲良く話をさせてくれたIやKくん、こんな自分に「ウチに来ないか?」とオファーをくれたU社長をはじめとする先輩経営者の皆さん、そして何より家族。他にもいっぱいいて、本当自分は恵まれているな、今までやってきたことは間違ってなかったなと人に会う度に思います。そんな周りの方々やお客様の期待を裏切らないように質の高い良いサービスを提供し、良い会社に成長させ、少しでも周りの皆さんに還元できればと考えています。

引き続きどうぞ宜しくお願いします。

株式会社KICONIA WORKSの情報

オフィスは渋谷にひっそり構えてます。あまり会社にはおらず、お客様先やコワーキングスペースを利用していますが。。。

ホームページも簡単ではありますがつくりました!Facebookページもつくりました!

https://kiconiaworks.com

すでに複数のプロジェクトをスタートさせており、来月からもまた増えて行く予定で、ホント色んな方のご支援で良いスタートダッシュがきれています。何かAI関連で相談があれば、LINEでもSNS経由でもいいですし、info@kiconiaworks.comまでご連絡いただければと思います。

最後に弊社の理念は「テクノロジーを顧客価値に変える」です。テクノロジー単体では何も価値を発揮しません。課題や目標に対して、テクノロジーとビジネスを上手く融合させることで初めて価値になります。これを追求していきたいと思います!(価値にならないテクノロジーの活用はしません!)

そしてこんな会社に興味あるという方、一緒に同じ志を持って汗水垂らしてくれる仲間も募集中ですので、是非お声がけください!

 

最後に・・・

色々訳あってFacebookとかSNSをやめていました。個人的に思うのはSNSメーリングリストっていうのは、多くの人に情報を拡散できるできますが、一方的コミュニケーションであり、背景知らない人がみたら勘違いしたり誤解を生んだりするからです。
ただ起業して思うのは、個人の話ではなく企業の経営者として情報を拡散すべきということで、今後はSNS等への投稿も企業ページとともに活性化していきたいと思ってます!ということで久々ブログも始めたわけでした。